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うれしの元気通信 2013/02/09 うれしの元気通信第18号
いきいき見聞録


嬉野市には3軒の酒蔵があります。塩田町の五町田酒造と瀬頭酒造、嬉野町の井手酒造です。
井手酒造は明治元(1868)年の創業で、創業時から清酒「虎之児(とらのこ)」一筋の造り酒屋です。
明日10日(日)と11日(祝)に蔵開きが開かれます。
今回の「いきいき見聞録」では新酒の仕込みをされている井手酒造にお邪魔し、工程や酒造りにかける思いなどを伺いました。
井手酒造1


1,取材当日、午前8時半に到着すると、既に米を蒸す作業が始まっていました。
 モクモクとたくさんの蒸気が立ち上り、初めて見る光景に私たちは興味津々です。
 原料となる米は、酒造りに適しているという佐賀県産の山田錦。
 蔵人たちは甑(こしき)という大きなせいろの機械で蒸した米をスコップですくい、
井手酒造 仕込み1
 粗熱を取りながらほぐし、
井手酒造 仕込み2
 一部はエアシューターで蔵の2階にある麹室(こうじむろ)へ送ります。

2,麹室では蒸米に種麹を散布し、麹菌を繁殖させて米麹を作ります。
 麹菌が発酵しやすい温度は32~40度。温度管理に最も気を使うといい、蔵人たちは発酵度合いを見るため、麹室に何度も出入りします。
井手酒造 仕込み3
 外は凍えるような寒さですが、麹室はまるでお風呂場のよう。蒸した米をスコップですくい上げる作業も麹室での作業も汗だくです。
 仕込みの時期は朝も早く、力仕事も多いので体力勝負とか。

3,次に見せてもらったのは蔵の中にずらりと並んだ高さ約2mのタンク。
 お酒の"もと"となる酒母に蒸米と米麹と仕込み水を4日間かけ3回に分けて入れます。これを「三段仕込み」というそうです。
井手酒造 仕込み4
 気温によって発酵の進み具合が異なるため何度もタンクを覗き、温度管理をしながら発酵の経過をチェックします。温度が下がり過ぎた時はタンクの下にあんかを当てて温度調節をすることもあると聞き、とても驚きました。
井手酒造 仕込み5
 泡の立ち具合、発酵する音、香り...。五感をフル稼働させての作業が続きます。

4,仕込み後、3週間ほどで搾ります。昔は酒槽という木製の圧搾機を使っていたそうですが、今は自動圧搾機です。
 仕込みタンクから運ばれたもろみはこの機械で酒と酒粕に分けられます。ここで、圧搾機から出てきたばかりの純米酒の搾りたて生酒を試飲させてもらいました。
井手酒造 しぼりたての新酒
 見た目はほんのり琥珀色で、口に含んだ瞬間、果実のような香りが鼻へ抜けます。初めての経験でしたが、飲みやすくとてもおいしいかったです♪
 
 搾った後は濾過、殺菌や発酵を抑えるための火入れ、調合・加水、火入れ、瓶詰め、出荷という流れです。
 2回ある火入れの工程も酒を濁らせないなど品質を保つことが大事。
 ここでもやはり、温度管理が重要です。


「虎之児」の名付け親は初代の井手与四太郎さん。
虎は我が子を思う愛情が深い。その虎のように愛情をかけて吟醸した酒を長く愛飲してもらいたい。そして千里を駆ける虎のように、その名が広く響き渡るようにとの願いを込めて命名されました。
嬉野町の代表的な酒として町内の旅館や飲食店の多くで愛飲されています。
温泉を愛した放浪の俳人種田山頭火も嬉野を訪れ、"たらふく飲んだ"と虎之児を味わったことを旅日記「行乞記」に記しています。
昨年は、小惑星探査機「はやぶさ」の性能計算書(飛翔実験計画書)の表紙に虎之児のラベルが使われたことが縁で、映画「はやぶさ 遥かなる帰還」(2012年)でスクリーンにも登場しました。
社長の井手洋子さん(79)は「嫁に来て以来、人生を虎之児に捧げたようなものです。虎の子って大事な物のことを言うでしょ。今では『虎之児』が私の『とらのこ』になりました」と語ります。
虎之児を造り続けて49年になる杜氏の山口文男さん(68)は「酒造りで最も気を使うのは工程ごとの温度管理。酒造りは一人ではできないので蔵人のチームワークが大事」と話されました。
酒造りが行われる11月から2月まで、蔵人たちは交代で泊まり込み、寝食を共にします。
井手酒造には昔から温泉が引かれていて、蔵人たちは毎日温泉に入って疲れを癒しているという嬉野ならではのお話も。
虎之児のおいしさの秘密を伺うと、「手作業が多いのでその分愛情が詰まっていること」。酒造りを間近で見せていただき、蔵人さんたちの苦労や酒造りに対する思いの深さを感じました。(ちゃっぴー)

社長の井手洋子さんと杜氏の山口文男さん
社長の井手洋子さんと杜氏の山口文男さん
築85年の井手酒造(嬉野川から撮影)

 
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